
検査の結果、認知症と診断されると、その瞬間から「疑い」が「事実」になります。
家族として、これからどのようにサポートしていけばよいのか?
すぐに何もかもと思わないで、まずは落ち着いて気持ちを整理するところからスタートさせましょう。
家族が認知症を受け入れる難しさ
家族が認知症という病気を受け入れることは非常に難しいことです。
実際、これまで認知症の患者を抱え歩んできた家族に共通していえること、それは・・
すぐに認知症を受け入れることはできなかった・・
ということです。
エリザベス・キュブラー・ロスという学者の「受け入れがたい事実に直面した人がたどる5つの段階」を元に家族がたどる気持ちをみてみましょう。
◆家族の気持ちの移り変わり
第1段階 | とまどい | ■受け入れたくない気持ち ■これからの不安、恐怖 |
第2段階 | 怒り、悲しみ | ■本人に対する苛立ち ■嘆き |
第3段階 | 改善を求めてさまよう | ■何とかしたくて試行錯誤する |
第4段階 | あきらめ、絶望 | ■「もう無理だ」とあきらめ、投げやりになる |
第5段階 | 受け入れ、新たなケア | ■脱力感からふと楽になる ■新たな見方ができる |
このような過程を経ていきますが、やっと受け入れることができるのは最後の第5段階になってからです。
もちろん、誰しもが同じ過程を通るとはいえませんが、多くの人がこのような道をたどってやっと受け入れることができたということです。
ですから、認知症と診断されて、すぐに受け入れようと頑張る必要はないのです。
認知症のことを周りは理解しにくい
認知症は他の病気と比べて偏見と誤解をもたれやすい病気です。
認知症の要介護者をもった家族からこのような言葉を聞いたことがありませんか?

本人はボケてるからいいけど、周りは大変だわ
このような言葉が聞かれる原因はなんでしょうか?
それは認知症が病気なのにもかかわらず、他の病気とちがってシミュレーションしにくい点にあります。
たとえば、あなたは家族が風邪をひいて熱を出した時、どのような対応しますか?

寒くない?大丈夫?無理したらダメだよ。
このように、病気になった本人の状態を心配し、それを言葉と態度に表すでしょう。
それが自然とできるのは自分自身が風邪をひいた経験があり、どのような苦しみになるのか身をもって知っているからです。
しかし、認知症はどうでしょうか?
認知症はあらゆる疾患が原因となっておこりますが、立派な病気であることにかわりありません。
しかし、同じ病気でも、周りが認知症を理解できないのは、まだ誰も認知症という病気になったことがないからです。
人間は経験したことがなければ、なかなかシミュレーションすることができません。
認知症が他の病気と比べて、周りの共感を得ることができない原因がそこにあります。
一般的な評価に振り回されないこと
大切な人が認知症と診断されることは家族にとって大きなショックです。
すぐに受け入れることは非常に難しく、段階を踏んでいくことでようやく受け入れることができます。
ですが、受け入れることを早め、そして楽にしていく考え方はできます。
それは一般的な評価に振りまわされないこと。
認知症の検査では正確な診断とその後の治療方針を決めるため、軽症度や重症度などのレベルに分けます。
しかし、実際は重症度の人が軽症度と診断された人よりも身の回りのことができるという例はたくさんあるのです。
ですから、診断の結果のレベルがどうだとか、要介護度がいくらだとか・・
そのような一般的な評価には振りまわされないでください。
認知症になっても、あなたの大切な人の本質はなにも変わっていません。
一般的な評価に振りまわされることなく、家族は本人そのものを見つめて応援していく気持ちをもちたいものです。
専門医と手をつないでいく
認知症という病気はシミュレーションが難しいため、なかなか理解することができません。
ですが、医学という面から唯一シミュレーションできるのが専門医というプロです。
脳のどの部分が壊れてしまうと、どのような症状があらわれるのか?など。
原因がわかれば、それによって症状がおこっているのだと理解できるでしょう。
そうすれば、他の病気と同じように不可解な行動、言動だと思うことがなくなります。
プロである専門医としっかり手をつないでいくこと。
そうすれば素人の私たちでも認知症という病気を客観的にみることができやすくなるのです。
そのためにも信頼できる専門医に、些細なことでも積極的に相談していきましょう。
医学の面から認知症を冷静に見つめることができれば、本人と認知症を切り離す考え方ができるようになります。

お母さんはなにも変わらない。認知症という病気がくっついただけ。
この考え方こそが認知症の介護を上手にスタートできる大きなポイントになっていくでしょう。