
介護は突然やってくることが多々あります。
■病気がきっかけ(脳卒中、心筋梗塞など)
■事故がきっかけ(転倒による骨折など)
きっかけの元になった病気やケガが治り、状態が安定し、医療の処方が必要でなくなった場合、入院から自宅への介護へと移行することに。
しかし、いきなり始まる介護に、受け入れる家族はまだ態勢が整っていないため、戸惑ってしまいますよね。
ですが、それは家族だけではありません。
本人も大きく戸惑い不安になります。
介護がスタートするにあたり、とりあえず介護保険制度を利用しよう!ということになりますが、そこで大きなハードルが待ち構えていることがあります。
それは、介護保険サービスの利用を当の本人が拒否することです。
しかし、介護は家族だけで対応するには体力的にも精神的にも負担がかかりすぎます。
さらに認知症が重なる場合、あえて家族ではなく介護のプロに頼まないとうまく運ばないことが多々あります。
では、本人が介護保険サービスを嫌がる場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
家族の思いと本人の思い
介護保険サービスを利用しよう!と思っても、本人が嫌がってしまえば何もすることができません。
では、このときの家族の想いと本人の想いの違いは何なのでしょうか?
※家族の思い

介護保険料を払っているんだから、当然の権利として利用しなきゃ!

自分でできなくなったんだから助けてもらうしかないよ
※本人の思い

他人が家に出入りするなんて疲れるだけだわ

わしは人様の世話になるほど老いぼれておらん!
このように、家族の想いと本人の想いは視点も違えば、考え方も異なります。
高齢者は変化をきらう
人間の脳は変化を嫌います。
なぜでしょうか?
それは、変化する内容がネガティブな事ではなく、ポジティブな事だとしても、どうしてもストレスを受けてしまうからです。
しかも、若い人よりも高齢者の方がたくさんのストレスを受けることになります。
たとえば、毎日同じ道を歩いて目的地にたどり着いていたのに、土砂崩れでその道が通れなくなった場合・・
※若い人

ちぇ!通れないのか。仕方ないな別の道を迂回しよう
※高齢者

なんだ、通れないのか・・でも他の道は一度も通ったことがないから不安だ・・
このように、若い時ならば目的を達成させるためならば少々の変化でも挑んでいける意欲があります。
しかし、高齢になると保守的になるため、今まで通りの道から外れた変化の道に挑んでいける意欲がありません。
では、なぜ保守的になるのでしょうか?
■新たなことを実行する体力に自信がない
■新たなことを覚える能力に自信がない
このように、高齢者は老化による衰えによって心身ともに若い頃のような「何とかなるさ!」という自信がもてません。
また、今までの道ではなく、新しい道というのは・・
■何が起こるかわからない
■どんな結果になるのかわからない
これらの不安が押し寄せてくることで、今まで通ってきた道、つまり「現状」にとどまった方が安心だと思ってしまうのです。
引け目を感じる
ところで、2000年に介護保険制度が施行される前の介護はどうだったのでしょうか?
それ以前は行政がホームヘルプサービスを行っていました。
しかし、それは「措置」という位置づけで、決定権は行政側が握っていました。
ですから、利用する側からすれば、どうしても「世話になる」というイメージが強く、どことなく引け目を感じる構造だったのです。
しかし、2000年に現在の介護保険制度が施行されると、サービスは「措置」ではなく、「契約」という形になりました。
つまり、利用者自身がサービス内容を選択し、措置ではなく、契約にもとづいて利用できる仕組みに変わったのです。
ですが、高齢者の中には、現在の介護保険制度の仕組みを理解できず、今だに他人から介護を受けることに対して「世話になる、引け目を感じる」という思いを持っている人がいるようです。
本人の不安感を理解する
では、介護保険サービスを拒否されないようにするには、どのように対応すれば良いのでしょうか?
■本人の不安な気持ちを察してあげる
まずは、介護保険サービスという新たな道へと進む本人の不安な気持ちを察してあげましょう。
高齢者ならではの「変化に対する不安」をしっかりと受け止めてあげます。
そのうえで、説得に入りましょう。
介護保険サービスを拒否する本人の想いは、不安感ですが、それは主に自分自身に対する自信のなさからきています。
そこに着眼していてはなかなか考えを変えてはくれません。
ですから、家族はきちんと自分たちの想いを本人に伝える必要があります。

私たち家族のためにサービスを受けて下さい。私たちが仕事を続けられて経済的、そして心身の健康を維持するためにもお願いします!
このように介護保険サービスを利用することは・・
■本人のためだけではないこと
■家族全員のためだということ
そして、そのことが・・
■介護の質もあがり、結果として本人と家族全員の幸せに繋がる
ということを、ストレートに伝えてみましょう。
新たな道に進むのが不安でも、「家族のため」という気持ちが湧き上がれば、介護保険サービスを受け入れる決心をしてくれることがあります。
本人の不安感を支えてあげる
高齢になると誰でも心身の老いから気力が減ってしまいます。
ですから・・
「歩みなれた道を多少の苦痛があってもそのまま進んでいきたい」
このように保守的に思ってしまうのは当然のことと言えるでしょう。
しかし、介護は家族だけでは背負いきれません。
ましてや、認知症が重なると、たとえ病気だとわかっていても、介護には大きな精神的辛さがともないます。
さらに現代は少子化で兄弟が少なく、また既婚でも共働きが多く、昔のように何世代も一緒に住んでいる家族は稀です。
もはや、介護は家族だけではなく、社会全体で支えていく時代になりました。
介護保険サービスの利用は必須です。
サービスを利用するためにも、家族が本人の不安感をしっかりと受け止め、支えてあげましょう。