
高齢になると、食べ物を飲み込んで胃に送る機能が弱ります。
これを嚥下(えんげ)障害といいます。
嚥下障害は肺炎をおこす一番の原因であり、また高齢になってからの肺炎は命を落とすケースもあるため要注意です。
さらに認知症が合わさると危険性がグンと増すことに。
では、肺炎で命を落とさないためにどのような対応をしていけば良いのでしょうか?
肺炎とは?
肺炎とは細菌やウィルスが肺に入り込んで感染してしまう病気です。
肺は呼吸によって入ってきた酸素を血液中に混ぜる装置ですが、肺炎になってしまうとその働きが弱まってしまうため酸素不足をおこします。
酸素不足の血液が脳に送られると意識障害やせん妄(うわごと、物を投げる)がおこることも。
(参考記事)
万が一、このような状態になってしまった時はいち早く救急車を呼んでください。
肺炎の症状があらわれにくい場合も
肺炎になると通常は高熱や咳の症状があらわれます。
しかし、高齢者はこのような症状があらわれないことがあるのです。
さらに認知症が重なると周りに不調を訴えることが困難になるため、肺炎になっても気づかれずに治療が手遅れになってしまうケースもあります。
このようなことにならないために、嚥下障害や認知症がある高齢者の介護では、周りがしっかりと肺炎の警戒心をもっておくことが必要です。
たとえ、発熱、咳などの症状があらわれなくても、せん妄(うわごと、物を投げる、)の症状が出た場合は、肺炎を疑い、いち早く対応しなければいけません。
嚥下障害によるトラブルを防ぐ
では、具体的にどのような対応をすれば良いのでしょうか?
肺炎をおこさないためにも、「食べること」、「飲むこと」にまず注意を払う必要があります。
■食べ物にとろみをつける
■水にとろみをつける
■姿勢を前かがみにして飲食する
食べやすいようにフレーク状にしたものは意外とパサパサして飲み込みにくいものです。とろみをつけて飲み込みやすくしてあげましょう。
水にもとろみをつけてあげると飲み込みやすくなります。冷たい水は刺激があるのでぬるめにしてあげてください。
姿勢はとても重要です。背中などにクッションを置いて前かがみになるようにして食べさせてあげましょう。
むせてしまった時は?
では、むせてしまった時はどうすれば良いのでしょうか?
■思い切って咳を出させる
■声を出させる
■背中をさすったり、軽く叩いたりする
■側にいて安心感を与えてあげる
このように、むせてしまったときはあせらず落ち着いて対応してあげてください。
また、むせているときに・・
水を飲ませてはいけません
むせているときに水を飲ませてしまうと誤嚥(肺の方に飲みこんでしまうこと)してしまいやすくなります。
口の中を清潔に保つ
食べ物や飲み物を間違って誤嚥してしまうことの他に、口の中に繁殖したバイ菌が肺に流れ込んでしまうことも大きな原因です。
睡眠中に起こりやすいため、とくに就寝前の歯磨きはしっかりして口腔内を清潔に保つようにしましょう。
しかし、認知症の人は歯磨きをすることを忘れてしまうことがあります。
それだけでなく、歯の磨き方を忘れてしまう人もいます。
じつは歯を磨く行為というのは・・
1.歯ブラシを手に持つ
↓
2.歯磨き粉のチューブをしぼり出す
↓
3.歯ブラシに歯磨き粉をつける
↓
4.歯にブラシを押し当てて磨く
という、意外と複雑な行程なのです。
このように物事の行為の仕方を忘れてしまうことを失行といいますが、このような場合は介護人が本人と一緒に歯磨きをして見本を提示してあげることが必要です。
(参考記事)
また、高齢になると唾液が減少するためにバイ菌が増殖しやすい環境になります。
口の中の乾燥対策には市販の保湿剤や口腔ジェルなどが有効的です。また棒キャンデーなども唾液の分泌が良くなるのでケアに加えてみてください。
このように口の中の乾燥に気づくためにも、定期的に口の中をチェックするようにしましょう。
もしも、口の中が乾いている場合は、一緒に皮膚の状態もチェックしてください。
口の中だけでなく、皮膚も乾燥し、さらにグッタリしている場合は脱水状態になっている可能性があるからです。
(参考記事)
見守りが大切
嚥下障害による肺炎を防ぐために大切なのは何よりも見守ること。
飲み込む力がないため、焦らせてはいけません。
本人が自分のペースで食事ができるよう見守りましょう。
また、日頃の歯磨きも気を配り、口臭がひどくなっていないか?など、口腔内が不潔になっていないかどうか常に注意を払いましょう。
高齢者の肺炎は命取りになります。
肺炎をおこさないためにも、また、いち早く気づいて対応するためにも、食事や歯磨きの時は常に見守ってあげるようにしてください。