
認知症で脳内の前頭葉に故障が起きると感情の抑制が効かなくなり、幼児的になります。
このような場合によくみられる症状として・・
■すぐに怒る
■我慢できない
■じっとしていることができない
など、介護が大変になる周辺症状が出てくることがあります。
また、前頭葉の障害で起こる特徴的なものが、「同じ行動や同じ質問を繰り返す」という症状です。
これを常同行動(じょうどうこうどう)といいます。
常同行動は子供や自閉症の人にもあらわれることがありますが、高齢者の認知症の場合、どのような対応をすれば良いのでしょうか?
同じ質問を何度も繰り返す場合
認知症の人は、脳内のネットワークが故障した状態であるため、何度も同じ質問を繰り返してくることがよくあります。
※たとえば、もうすでに自分の母親は他界しているのに・・

ねえ、お母さんは元気にしているかしら?
と、何度も何度も聞いてくることも。
家族にとっては繰り返し同じことを聞かれてうんざりしてしまいますが、本人にとっては何度も質問しているという自覚がありません。
ですから、このような場合は・・

うん!きっと元気にしているよ
このように、他界したことなど悲しい内容はあえて言わないようにオブラートに包み込むような返事をしてあげましょう。
また、根気が入りますが、本人の気持ちになって何度でも答えてあげるようにしてください。
同じ行動を何度も繰り返す
同じ行動を何度も繰り返す状態はいくつかのパターンにわかれます。
■同じ場所を歩き回る
毎日決まったコースを歩きまわります。
それだけならば良いのですが、歩きまわる先で、同じ店に入って同じ物を万引きしてきたり、同じ畑にいって同じ野菜をとってきたりと、家族だけでなく周囲に迷惑をかける行動がパターン化してしまう場合もあります。
■同じ時間に同じことをする
まるで時刻表があるかのように同じ時間に同じことを繰り返して行います。
■同じ物を調理する
女性に多いのですが、たとえば、味噌汁の具が毎日同じものになったり、また男性ならば、毎日同じ物が食べたいと要求してきたりといった一定のパターンになってしまう場合があります。
同じ行動にどのように対応するか?
では、同じ行動を繰り返す場合、どのような対応をすれば良いのでしょうか?
■本人の気持ちを考えて見守る
本人の繰り返す行動が、さほど問題にならない場合は見守ってあげるようにしましょう。
たとえば、トイレットペーパーの紙を点線の所で切り取って大量に重ねていく人がいるとします。
このような行動があらわれた場合、最初はびっくりしますが、思うほど害はありません。本人に好きなだけ紙をちぎってもらい箱に入れてトイレの紙として利用することができます。
家族からすれば、このような行動はまったく意味がないことのように見えますが本人にとってはそうではありません。
たとえば、私たちも、一心不乱にジグゾーパズルをはめてみたり、ほぐれた毛糸を巻いてみたり・・・そのようなことで気持ちが何となく安心できるといった経験がありますよね。
ですから、そのような本人の気持ちをくみとり、問題がない行動の場合は、できるだけ見守ってあげるようにしましょう。
■受け止めたという区切りをつける
延々と同じことを繰り返す場合、いくら問題がないことでも、区切りをつけてやめてもらうことも大切です。
そのようなとき、「もういい加減に終りにして」と言いたくなりますが、そこはグッとこらえて・・

お疲れ様!ありがとう!そろそろお茶にしようね
このように本人がしている作業に対して、意味があることだと受け止めた区切り方をしてあげるのが良いでしょう。
実害がある場合の行動
同じ行動を繰り返すとき、ときには周囲に迷惑をかけてしまうパターンになってしまうことがあります。
たとえば・・
■同じ店で同じ物を万引きしてくる
■同じ畑で野菜を盗ってくる
このような、家族以外の人たちに迷惑がかかってしまう行動に、どのように対応すれば良いのでしょうか?
■お店や畑の持ち主に話しておく
このような場合は、本人にその気がなくても世間では軽犯罪になってしまいます。
ですから、何としても解決しなければいけません。
一番良い方法は、パターン化している行動に対して、事前に対処しておくことです。
まずは本人の行動パターンをしっかり把握しましょう。
そして、
万引きをしてしまうお店には事情を話してお金を渡しておく
野菜を盗んでしまう畑の持ち主には事情を話しておく
このように事前に相手側に話しておくことで、軽犯罪にならずに未然に防ぐことができます。
役に立つ行動パターンに切り替える
常同行動はときとして、困った行動パターンになることもありますが、ひとつのことに打ち込む集中力は何かを成し遂げる力でもあります。
ですから、その行動パターンを他の物に切り替えてあげるように少しずつ促していければ良い結果を生み出すことが可能です。
たとえば、その集中力を、「掃除をすること、お皿を洗うこと」に使ってもらうように促します。
人間は生きていく基本として、どのようになっても「誰かに必要とされたい、役に立ちたい」と思っているものです。
(参考記事)
その気持ちを、役に立つ生活パターンとして行動してもらえば、本人も周りも嬉しい結果を生み出すことができます。
■本人の「やらずにはいられない!」という熱意を理解する
■本人の性格や行動パターンを把握する
■役に立つ生活パターンにする場合、休息も入れたパターンにする
■困った行動がパターン化してしまう前に早めに良いパターンにする
このように、困った行動パターンに対しては早めに日常生活に役立つ行動パターンに切り替えていくことが大切です。
また、積極的にデイサービスに参加することで、新しい刺激が入り、困った行動パターンが別のものに切り替わることもあります。
時には受け流す気持ちも大事
同じ質問を何度も繰り返されると正直ヘトヘトになってしまいますよね。
ですから、毎回毎回まじめに真剣に答えるのではなく、良い意味でいい加減に返答することも大事です。
介護はどうしても、介護される側の気持ちを重視して対応を考えますが、介護人にとっても一分一秒が人生の貴重な時間です。
「同じ質問を繰り返す、同じ行動を繰り返す」
これらの症状がとくに問題がない行動ならば、あまり真剣にまじめに向き合わず、時には軽く受け流す気楽さも持ちましょう。