
認知症の症状はさまざまです。
そして、それら各症状には上手につきあえる対応法のコツがあります。
しかし、その前にすべての症状に共通するものを忘れてはいけません。
「暴言や興奮」と、「無口や無気力」
これらの症状は一見すると動と静。
正反対に見えますよね。
しかし、どちらも「不安感」が原因としてその背景に必ずあります。
症状が違うのは現れ方が人によってちがうだけなのです。
では、くわしくみていきましょう。
最大の不幸は「価値がなくなること」
私たちは他人の評価によって自分の価値をみつけだします。
どんな人でも根底には「人の役に立ちたい」という奉仕の気持ちや、
「バカにされたくない」、「認められたい」という自我を守るプライドがあります。
マザーテレサが以下のような言葉を残しています。
「この世で最大の不幸は、戦争や貧困ではありません。人から見放され、自分は誰からも必要とされていないと感じることなのです」
この世の中には自分以外にも他人という存在がたくさんいます。
それは、なぜでしょうか?
なんのためでしょうか?
広い視野で他人の必要性を眺めてみると、人間というのは他人がいて初めて自分という自我を評価、表現できるからではないでしょうか?
しかし、認知症の人は、「もう自力では何もできない」という不安から、このような人としての基本的欲求が満たされません。
(参考記事)
必要性を感じさせてあげるケアを
では、認知症の人はどのように不安がっているのでしょうか・・

私はもう役立たずな人間なのかもしれない・・
このような不安感に追い詰められたかと思えば・・

いや・・まだ大丈夫だ・・まだまだ・・
今度は「何とかなる」と必死に思い込もうとしたり・・。
このような2つの気持ちに日々揺り動かされている状態なのかもしれません。
それはとても不安定で軸がない状態です。
介護する側は、本人の必要性を言葉や行動で示してあげましょう・・

お手伝いしてもらえて助かりました!ありがとうございます!

洗濯物をたたんでくれてありがとう!助かったよ~
このように・・
あなたが必要であるということ、あなたがいてくれて嬉しいということ
本人にこれらの気持ちを伝えてあげることができれば、どれほど背負っている不安感を軽くしてあげることができるでしょうか。
私たちはみんな居場所を求めている
介護から離れるようですが、学校のいじめ問題をたとえに考えてみましょう。
近年、学校のいじめを苦にして自殺をしてしまう子供たちが増えていますよね。
とても胸が痛むことです。
なぜ、子供たちは自殺を選んでしまうのでしょうか?
それは、「居場所を見つけることができなかった」からだと思うのです。
子供にとって学校は世界のすべてです。
しかし、本当は学校以外にもたくさんの世界があり、受け入れてくれる場所があります。
ですが、子供は他に世界があるということがわかりません。
自分のいじめられている世界だけがすべてだと思い込んでしまいます。
そんな子供たちに
学校以外にも、塾や、スポーツクラブなど、どこでも・・
たったひとつの場所でいいので
「君はここにいてもいいんだよ」
このように、自分を受け入れてくれて、自分が自分のままでいても良い居場所をたったひとつでも見つけてあげること。
周りがそれをできていれば、いじめによる自殺を少しでも防ぐことができたのではないでしょうか?
認知症の人も同じだと思うのです。
「自分のいる世界に安心感がもてない」
これほど、人間が不安になることはありません。
そして、認知症の人は症状が悪化してしまうと、自分の世界がすべてになってしまいます。
認知症という病気が邪魔しているのならば、こちら側からその世界に入ってあげましょう。
そして、本人の世界で不安を軽くしてあげることで
「そこにそのままいてもいいんだよ」という安心感をあげることが大切だと思うのです。
安心感がすべての症状対応の基本
このように、各症状を個別化して対応法を考える前に・・
■不安感を理解してあげること
■さまざまな形で安心感をあげること
この2点を基本に各症状に向き合ってみてください。
また、あまり深刻になりすぎないことも大切なポイントです。
私たちも不安な時に、一緒に不安がられるよりも、笑い飛ばしてくれた方が気が楽になるもの。
それと同じかもしれませんね。