
2004年以前、認知症は痴呆症と呼ばれていました。
症状があらわれた高齢者は痴呆老人と呼ばれ、自宅で生活ができなくなると老人病院や精神科病院に入院していた時代です。
「痴呆」という言葉は、「ボケ」という言葉と混合されることが多く、それでは人権を尊重するためにはふさわしくないという声が出始めました。
そして、痴呆症から認知症という名称が生まれたのです。
しかし、現在も、認知症のことを痴呆症、ボケ、などの言葉で呼ぶ人はたくさんいますよね。
そのためか、まだまだ、
「認知症=病気」
という認識が一般的に浸透しきれていません。
認知症と正しく向き合うためにも、まずはどんな病気なのか?
それをくわしくみていきましょう。
認知症はいくつもの病気をあらわしている
認知症は一般的にいうと脳の病気です。
しかし、さらに厳密に言うと、認知症の症状があらわれる病気の総称のことです。
たとえば、ひとくちに腹痛といっても、その症状を起こす病気は胃かいよう、十二指腸かいよう、盲腸など、たくさんありますよね。
それと同じように、認知症の原因となる病気も複数あるのです。
腹痛を治療しようとすれば、その原因になっているのが胃かいようならば、その胃かいようという病気に目を向けなければ対処ができません。
認知症も、人によってさまざまな病気が原因となっています。
ですから、まず第一にどの病気が原因となって認知症を発症したのか?
そのことに目を向けなければいけません。
認知症の原因となる三大認知症
認知症はさまざまな病気が原因となっておこりますが、そのほとんどを以下の3つのタイプが占めています。

このように、認知症の原因となる過半数はアルツハイマー型。
次に多いのがレビー小体型、血管性であり、これらは三大認知症と呼ばれています。
その他15%には治るタイプもある
認知症は原因となる病気があって発症します。
ですから、その病気を治療すれば認知症を回復させることも可能です。
◆回復が可能なタイプ
正常圧水頭症 せいじょうあつすいとうしょう | 脳脊髄液が脳室にたまり圧迫する |
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慢性硬膜下血腫 まんせいこうまくかけっしゅ | 頭をぶつけたりしたときに頭蓋骨と脳との間に血の塊ができて圧迫する |
その他、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、栄養障害、薬物、アルコールなど。
認知症をさらにわかりやすく述べると
今や認知症はさまざまなメディアで語られるようになりました。
しかし、認知症は原因となっている多くの種類の病気がもとであらわれる症状のため、具体的に「こういうものだ!」とは一本化はできません。
ただし、共通点として、わかりやすくと述べると以下のようになります。
(参考書籍より)
【認知症とは】
■原因疾患などによって起こる
■そのことによって脳が器質的な変化をきたす
■そのことで知的な能力が衰退する
■そのことで生活に支障をきたす
引用元:だいじょうぶ認知症/和田行男著
このように、認知症とは・・
●認知症というものが独立して症状をおこすのこではなく、必ず原因となる疾患があるということ。
●「脳が器質的な変化をする」というのは、つまり脳そのものが別のものに変質してしまうということ。
●それによって、子供時代から習得してきた能力が衰えてしまうこと。(一気にではなく少しずつ)
●今まで習得してきた能力がなくなることで、普段できていたことができなくなってしまう。
このような流れになるのが認知症の共通点といえます。
しかし、脳は各部分ごとに受け持つ機能がちがいます。
ですから、脳のどの部分が壊れるかによって、どのような症状がでるのか?それは個人差があり、人それぞれなのです。
この個人差が認知症に対する誤解を生み、また対応の難しさを生みだしてしまうのです。
的確な対処にはまず原因を知ること
このように認知症とは原因となる病気があっておこる症状の総称のこと。
ですから、原因となっているそれぞれの病気によって、治療方法がちがってきます。
また、あらわれる症状もちがってくるため、それらの対応策もちがってくるのです。
認知症とひとくくりに考えてしまっては適切な治療や対応ができません。

お母さんの認知症の原因になっている病気は何かしら
まずは原因となっている病気を知ること。
そこから、治療と症状の対応策を考えていきましょう。