
私たちは認知症を患ったお年寄りを無意識のうちにひとくくりに考えてしまっていないでしょうか?
たとえば、
「この症状は認知症でよく見られるパターンだ」
などなど・・
もちろん、それらの共通するパターンを知ることはとても大切なことです。
しかし、そこには落とし穴があります。
それは・・
たとえ共通するパターンに見えてもそれらを起こしているのはやはり個々の人格によって違うということです。
ですから「その人」そのものを知り、向かい合うことが大切なのです。
では、認知症患者の人権についてあらためて考えていきましょう。
ひとくくりは無視と同じ
認知症は一見すると、その人の人格が消えてしまったように感じることがあります。
しかし、決してそうではありません。
どんなに認知症が悪化しても、その人を形成しているコアの部分はきちんと残っているものです。
しかし、認知症をひとくくりにしてしまうと、
なぜそのような行動をするのか?
それを、「知ろう」とする努力をせずにすみます。
ですが、努力せずにすむぶん、なぜそのような行動をとるのか理解することが不可能になります。
そして、理解できないうえに、本人の人格を軽くみてしまうことに・・・。
つまり、
ひとくくりはその人の人権を無視するのと同じなのです。
認知症は自尊心を失いやすい
認知症は感情という原始的な部分は残りやすいのに対して、知的な能力は衰えやすくなります。
私たちは無意識に他人の評価を得て自尊心を保っているもの。
しかし、認知症の人は知的能力が衰えるので、同じ失敗を繰り返してしまいます。
なぜ、失敗するのかわからないけども、周りの人が嫌がっているという空気だけはしっかりと感じとります。
そのため自尊心を保つのが難しく、心の不安定さを増してしまうことになるのです。
人権を尊重して接する
先述したように認知症になっても人格のコアな部分は残っているものです。
それはその人にとって非常に大切な部分であり、なにが残っているのかは人それぞれです。
その残っている大切な部分を見つけたら、そこを認めて尊重してあげましょう。
たとえば、長年、教師をやってきた人が「先生」と呼ばれると顔つきがパッと輝く場合があります。
そこで、その部分を認めて接してあげるようにします。

先生!手伝ってくれてありがとうございます。助かりました

いやぁ~たいしたことないよ
このように、本人の中で残っている大切な部分を評価してあげて、自尊心が保たれるようにしてあげることが大切です。
認知症の人の権利を守る
いま、介護をしている私たちも将来もしかしたら認知症になるかもしれません。
そのとき、あなたはどのような対応をされたいですか?
「認知症の人は自分たちと違うから、同じことができなくなって当たり前」
このように思われたいですか?
いいえ、こんな対応されたくないですよね。
認知症の人は、ただ病気が物事を困難にさせているだけです。
認知症という病気をとりされば、そのひと自身はきちんとそのまま存在しています。
認知症の人と接するとき、介護をするとき・・
自分自身のことだと思って、本人の人権を守ってあげてください。
そのことが、将来、私たち自身のためにもなるのです。