
高齢になると、誰でも自然と身体が老化していきます。
老人性難聴もそのひとつ。
しかし、難聴は思った以上に要注意です。
「年のせいだから」
と、軽く考えて放っておくと後悔することになるかもしれません。
なぜなら、難聴は認知症を発症させるリスクを高め、そして進行を悪化させてしまう恐れがあるからです。
そのため、老人性難聴が与える影響を広い視野からきちんと知って対応していく必要があります。
■認知症にならないために
■認知症の症状を進行させないために
老人性の難聴について詳しく学んでおきましょう。
目次
認知症になりやすい人となりにくい人
認知症は誰でもなるわけではありません。
ですが、一般的に「なりやすい人」と「なりにくい人」の傾向があるようです。
では、なにがどう違うのでしょうか?
認知症に「なりやすい人」と「なりにくい人」の違いは以下のタイプだといわれています。
認知症になりやすい人 | 真面目、内向的、ネガティブ思考 |
認知症になりにくい人 | おおらか、外交的、ポジティブ思考 |
このように、一般的にいわれる認知症になるか?ならないか?の別れ目は性格の違いが大きく影響受けるということになっています。
このような傾向を見ると、「自分は内向的だから心配だ」と思われる人がいるかもしれませんが、これはあくまで一般的な傾向であり、一概には言えないので安心してください。
真面目であっても認知症にはならない人もいます。
逆に、おおらかであっても認知症になる人もいます。
どうしてでしょうか?
それは高齢者が抱える老化という身体的な悩み、そして喪失感などの精神的な悩みなど、認知症の発症、進行の悪化にはさまざまな要因が複雑に絡み合っているからです。
ですから、認知症になりやすい人、なりにくい人の傾向を気にするよりも、もっと他のことに目を向けていく必要があるのではないでしょうか?
分かれ道は好奇心の持続?
認知症に「なりやすい人」と「なりにくい人」の傾向をみると気づくことがあります。
それは、なりにくい人の「おおらか、外向的、ポジティブ思考」には好奇心が大きく関係しているだろう、ということです。
好奇心とは、生きていくうえで非常に大切な欲求であり、胸の奥から湧き上がるワクワクする時のあの感情です。
認知症になりにくい人は「おおらか、外向的、ポジティブ思考」ですから、なりやすい人の「真面目、内向的、ネガティブ思考」よりも、好奇心が生まれやすいという大きな利点があります。
そして、この好奇心が認知症の発症と、進行に大きく影響を与えているのではないでしょうか?
だったら、一般論どうりではないか?
と、思われるかもしれませんが、たとえ、おおらかな人でも、高齢による老化、喪失感、認知症の発症などによって、ウソのように逆の性格になってしまうこともあるのです。
つまり、ずっと好奇心を持ち続けていく
このことが大切なのです。
脳は刺激を求めている
脳は刺激を受けることで活性化していきます。
しかし、高齢になると、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感が衰えていくことに。
私たちが何かに対して好奇心を持つきっかけとなるのは、五感を通して感じることができるからですよね。
■綺麗な風景を眺める(視覚)
■話を聴く(聴覚)
■花の香りをかぐ(嗅覚)
■美味しいものを食べる(味覚)
■陽の暖かさを感じる(触角)
もしも、これらを感じる五感が衰えてしまえば、どんな世界になってしまうのでしょうか?



このように、外部からの情報が入ってこなくなります。
そして好奇心を持つきっかけが少なくなり、同時に脳への刺激も減ってしまうことに・・・
聴覚が鈍くなると欲求が減少する
五感すべて大切ですが、とくに聴覚は、生きていくうえで他人とコミュニケーションをとるために欠かせません。
なぜなら、他人とは必ず会話を通してコミュニケーションをとる必要があるからです。
耳の聴こえが悪くなってしまうと、家族と会話するのが嫌になったり、外出するのが不安になったりと、新しい情報や、新しい物を発見する機会がグンと減ってしまうことでしょう。
それはつまり好奇心を生み出すきっかけをつぶしてしまうことになるのです。
聴覚は何とかなるからこそ早めの対処を!
高齢になるにつれて衰えていく五感「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」のうち、嗅覚や味覚や触覚は何かでカバーすることが難しい感覚です。
しかし、視覚はメガネの着用、または白内障手術などで、そして聴覚は補聴器で聴こえをカバーすることが可能です。
このように老化によって衰えた五感を維持していくことは、好奇心を生み出すきっかけをなくさないためにとても大切なことなのです。
補聴器の性能は飛躍的に良くなってきました。
耳の聴こえが悪くなっても早めに対処していけば、好奇心を妨げることなく、「会話をしたい!出かけてみたい!」という気持ちを持続させてあげることができるのです。
難聴はどうしておこるのか?
では、なぜ高齢になると耳の聴こえが悪くなってしまうのでしょうか?
私たちは以下の2つの機能が働くことで脳に音を伝えています。
1.耳に入ってきた音をアンテナの役目をしている細胞がひろう
2.音をひろった細胞が神経を通じて脳へ伝える
この2つの働きがあってこそ、外部の音を脳へ伝えることができます。
しかし、高齢になるとこの2つの働きが衰えてしまうことに・・・。
さらに、高齢になると以下の原因も加わります。
■高血圧、糖尿病などの持病
■さまざまな薬の服用
これらのことがさらに高齢者の耳の衰えを早めてしまう要因になるのです。
高い音から聴こえにくくなる
老人性難聴に対して補聴器で早めに対処するにはまず症状にいち早く気づかなければいけません。
気づくきっかけになるのが、高い音が聴こえにくくなるということです。
たとえば、炊飯ジャーなどのお知らせで鳴るような、ピピピピピー!といった高い音から聴こえにくくなります。
また、老人性難聴は耳の機能の老化によっておこるため、片方だけではなく両方の耳に症状が出るのが特徴です。
音が聴こえないことの不安
周りの音がよく聴こえないというのはとても不安なものです。
人間は五感のうち、もっとも早く習得するのは聴覚と言われており、実際、赤ちゃんはお母さんのお腹にいる時からすでに外の音を聴いています。
それだけ、聴覚は人間が生きていく中で最も重要な器官であるということでしょう。
その大切な聴覚が衰えてしまえば、たくさんの不安がおしよせることになります。
■電話に出たくない
■外出したくない
■町内のイベントなどに参加したくない
■家族と会話するときイライラする
■テレビの音が聴こえないので家族と一緒に楽しめない
このように難聴が生活に支障をおこすようになれば、たとえ性格が認知症のなりにくいタイプの「おおらか、外向的、ポジティブ思考」の人であっても真逆になってしまう可能性があるのです。
また認知症になってしまった場合、さらに多くの不安感がおしよせることになります。
難聴を感じたら耳鼻科へ
では、難聴を感じたらすぐに補聴器を購入すればよいのでしょうか?
いいえ、まずは耳鼻科を受診しましょう。
なぜなら、難聴の原因が耳の機能の老化ではなく、耳垢が溜まったことでおこる耳垢栓塞(じこうせんそく)の場合があるからです。
耳垢が溜まると・・
■聴こえが悪くなる
■つまったような感じがする
■痛みがある
このような症状が出ます。
しかし、老人性難聴とちがって、片方だけの耳に症状が出やすくなります。
ですが、たとえ症状が両耳にあらわれても、念のため、まずは耳鼻科を受診するようにしてください。
安物の集音器に手を出さない
認知症の予防や、悪化に補聴器がとても大切なことがわかりましたが、補聴器選びは慎重におこないましょう。
なぜなら、安い補聴器はただ単に周りの音を大きくするだけの集音器であり、とても使いづらく快適とはいえません。
これではせっかく補聴器を買っても本人も嫌がって使用してくれないことがあります。
そうならないためにも、補聴器はきちんとした専門店で購入するようにしましょう。
「たかが難聴」と放置しない
このように、難聴は認知症の発症リスクや、進行の悪化に大きく影響します。
決して、「たかが難聴ぐらい」と気軽に考えないようにしてください。
高齢になっても好奇心をずっと持ち続けることが認知症の予防につながります。
また、たとえ発症してしまった後であっても、残された能力を維持させることにつながります。
それほど、人間にとって好奇心を持ち続けることは大切なことなのです。
また、老化により、どうしても耳の聴こえが悪くなる高齢者には日頃から以下のことに注意して話すようにしてあげてください。
■話しかける時は静かな環境で話す(テレビの音量など下げる)
■大きすぎず小さすぎない声でゆっくりハッキリ話す
■真正面から目を見て話す
■わかりやすく短い内容で話す
■理解できない時は言いかえて話す
このように、耳の聴こえが悪くなってしまった高齢者の立場になって話しかけるようにしましょう。
会話は大切なコミュニケーションです。
そして高齢になっても、認知症になっても、好奇心を持続させるための重要なツールです。
認知症を予防するためにも、また、進行を悪化させないためにも、難聴はできるだけ早めに対処してあげてください。