(症状11) 幻覚

認知症とは脳の細胞が壊れてしまう病気です。

ですから、その壊れる場所によっては、

その場所にないのにものが見える

という症状がおこることがあります。

では、このような症状にはどのように対応していけば良いのでしょうか?

くわしくみていきましょう。

感覚がなくなるという不安

人間は周りの情報を五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)でキャッチしています。

そのうちの80%は視覚から情報を得ているといわれ、認知症でこの視覚に障害が出ることがいかに大きなことかがわかりますよね。

また、幻覚と合わせてよく現れるのが「聴こえないものが聴こえる」幻聴です。

聴覚は人間にとって原始的な感覚であり、最後まで残るであろうといわれている感覚です。

このように、五感のもっとも大切な視覚と聴覚に障害が出てしまうということは本人にとってどれほど不安なことでしょうか?

私たちは五感を使って情報を得ることができるからこそ適した行動がとれます。

対して、五感に障害が出てしまう認知症の人にとって周りの情報が得ることができず混乱してしまうのは当然といえるでしょう。

まずは、このような本人の不安感を察してあげることが大切です。

夜間に多い「せん妄」

せん妄とは、記憶障害や、「ここはどこ?今はいつ?」などの見当識障害がおこる症状です。

認知症のせん妄は、一過性の短期的な「せん妄」と違って持続性があり、長期にわたることが多くあります。

(参考記事)

認知症のせん妄は夜間におこりやすく、徘徊したり、大声を出すことも。

ところで、どうして夜に多いのでしょうか?

それは誰でも夜になると何となく不安が出てくるもの。

そのうえ、認知症の人は周りの情報がつかみにくくなっているため、その不安感が倍増すると考えられます。

ですから、夜になっても本人の不安感があらわれないようにしてあげることが大切でしょう。

環境を整えて安全を確保

本人の不安感をやわらげる対応も必要ですが、まずは何よりも身体の安全を確保しなければいけません。

なぜなら、夜間せん妄は、家族も寝静まっている時間帯に起こり、本人の行動に対して監視の目が行き届かないからです。

ですから、夜間には以下のような対応をしておきましょう。

【対応例】
■離床センサーや玄関センサーを使う
■寝室が二階の場合は窓にカギを二重にかける

認知症のせん妄は家族が気がつかない間に外に出てしまうことがあります。

寒い冬の場合は最悪な事態になりかねません。

また、二階であっても一階だと思ってしまい窓から飛び降りてしまうことも。

まずは身体的な安全を確保するためにも、環境を整えてあげましょう。

不安の原因をとりのぞく

では、具体的に幻覚の対応はどのようにすれば良いのでしょうか?

まず、忘れてはいけないのが本人の世界では確かに見えているということです。

なぜなら、私たちが目にしている画像は、目から取り込み、そして脳が処理して映像化しているからです。

つまり、私たちは誰でも脳の中を見ているということになりますね。

ですから、脳が壊れてしまう病気の認知症を患ってしまえば、実際にないものを映像化しても不思議ではありません。

「夜中に甲冑を着た武士がやってくる」

たとえば、このように訴える本人に・・

「今の時代に武士なんていませんよ」

といっても解決はしません。

なぜなら、本人の世界では本当に甲冑を着た武士が見えているのですから。

ですから、本人に合わせて対応してあげましょう。

父(泣く)

夜中に甲冑を着た武士がやってくるんだ・・怖くてたまらない


兄(笑顔)

そうですか。では「守ってください」ってお願いしてみるのはどうでしょうか?


父(え)

なんだって?守ってくださいって頼むのか?


兄(笑顔)

そうです。その武士は先祖の方ですよ。きっと。


父(困った)

私の先祖の方か!なるほど、そうか!そうかもしれないぞ

このように、本人の世界に入った対応をしてあげることが良いでしょう。

また、幻覚による恐怖に対しては、良い方向に心が向くようにしてあげるのもコツです。

では、対応例をまとめて確認しておきましょう。

【対応例】
■「本人が見ている物がある世界」に入ってアドバイスする
■幻覚の原因となっている刺激をとりのぞく
■同じ場所で幻覚が現れる場合は環境を変えてみる
■一度、目を閉じて、もう一度、開けてもらう

幻覚をおこしやすいのはレビー小体型です。

レビー小体型の場合は、本人に説明すれば、「自分だけに見えていて、他人には見えていない」ということを理解してもらえる可能性があります。

その場合はまたそれに合った対応をしてあげるようにしましょう。

固定観念を捨てる

先述したように、私たちは誰でも脳の中を見ています。

げんに、誰かと同じ物を見たとしても意見が違うことはよくあることですよね。

実際に量子物理学では、

見ようとする対象物は、見られる側の影響を受ける

ということが実証されています。

つまり、見ようとする物に私たちが意識を向けるからこそ、脳がその対象物を処理して映像化するわけです。

自分は他人とまったく同じ物を見ているわけではない

このことを基本に考えてみると、脳が壊れてしまう認知症の人がとんでもない物を映像化してしまうのもうなづけるのです。

このように、「本人が見えている物は、本人にとっては真実である」

このことをベースにして対応してみるようにしてください。