(症状12) 浪費(お金の管理ができない)

認知症が進行すると、それまで普通にできていた当たり前のことができなくなります。

生活の中で、このことが一番困るのがお金に関連することですよね。

■同じ物をたくさん買ってくる

■高価な物をためらうことなく買う

■財布が小銭だらけになってしまう

このように、お金の管理が難しくなってしまえば、生活に大きな支障が出てしまうことに。

では、このようなお金の管理が難しくなった本人に対してどのような対応をすれば良いのでしょうか?

くわしくみていきましょう。

お金の管理は複雑でややこしい

私たちは普段の生活の中で、当たり前のように買い物をしてお金を支払っています。

また、収入と支出を把握し、月に食費はいくら使えるのか?こづかいはいくら使えるのか?

当たり前のようにしているこれらのお金の管理というのはじつはとても難しいものです。

認知症になり症状が進行していくと、ただでさえ難しいお金の管理ができなくなるのは当然のことと言えるでしょう。

「お金をもたせてほしい」と言われて困る

お金の管理ができなくなった場合、紛失の危険性や、浪費などの可能性がでてきます、

それらを防ぐため代わりに一緒に住んでいる家族や、本人が信頼している親族がお金や預金通帳を預かっているケースが多くあるでしょう。

しかし、認知症は「病識」がない病気です。
(※病識とは自分が病気であることを認識していること)

つまり、自分の異変に気づいてはいても、症状が進行していくに従って、認知機能が低下していると本人は自覚できていません。

ですから、紛失や浪費を防ぐためだからといって家族がお金や預金通帳を預かっていても、

「お金をもちたい」という欲求は強く残ります。

このような場合、してはいけないNGな対応は、

「すぐに失くしてしまうからダメ!」

と、リスク回避のみを優先させて本人の思いを拒絶してしまうことです。

リスク回避の対応では心理状態が悪化する

認知症は身体的な症状と共に、不安、恐れなどの感情による心理症状が多くあらわれます。

また、この心理症状は認知症の進行具合に大きく関係しており、不安、恐れが強くなればなるほど症状も早く進行してしまうことに。

家族としては「本人のため」だと、良かれと思いしていることも、じつは本人の不安や恐れを増してしまっていることがあるのです。

リスクを回避することに視点を当てた対応では心理状態を悪化させる大きな原因となってしまうことでしょう。

そうなってしまえば、リスクを回避したつもりが、症状の進行によってさらなる大きなリスクを背負ってしまうことになりかねません。

そうならないためにも、本人と介護人にとってベストな対応を探すことが大切です。

なぜお金がほしいのか?その気持ちを考える

本人はなぜお金を欲しがるのでしょうか?

まずは、そのことに目を向けて考えてみましょう。

「お金」というのは私たちが生きていくためになくてはならないものです。

(参考記事)

そして、ただ単に欲しいものを買うことだけがお金を持つ意味ではありません。

たとえば、あなたもたまにはこのような気持ちにならないでしょうか?

弟(笑顔)

さあ!給料日だ!今夜は仲間と飲み会するぞ!


妹(ほ)

今回はすごく頑張ったし、自分へのご褒美に何か買い物をしよう


このように私たちはお金にさまざまな思いで付き合っています。

そのさまざまな思いとは、

■ストレスを発散させるため

■自分自身を認めるため

物質だけではなくこのような思いも一緒に叶えてくれるのがお金です。

また、「お金を持つ、使う」という意味はこれだけではありません。

お金の価値を理解して、お金を使って買い物をするのは人間だけです。

お金によって経済が回っている現代社会において、「お金を持つ、使う」

このことができるのは人間であることの象徴です。

つまり、それによって・・

社会の一員であるという安心感

生活を維持する以上に、社会の中で生きていくための大切な気持ちを持つことができるわけです。

本人の気持ちになって考えてみましょう。

認知症になれば、あらゆることが自力でできなくなります。

それによってもたらされる不安感を解消するためにも、

「お金をもちたい」

という、人としての欲求がでるの当然ではないでしょうか?

リスク回避のみの対応では根本的な解決ができない理由がここにあるのです。

本人の尊厳を守る

認知症であっても初期の頃であれば、側にいて見守ってあげることでお金の管理をしていくことは可能です。

また、お金を管理することで以下のようなメリットを得ることができるでしょう。

【お金を管理するメリット】

■社会の中でまだまだやっていけるという自信が持てる

■生活を自分で管理しているという張りが生まれる

■店員さんとのコミュニケーションなどが刺激になる

■他人に対して自分の役割を感じることができる

このように、「お金を管理する」ことによってさまざまなメリットがあります。

では、具体的にどのような対応をしていけば良いのでしょうか?

【対応例】
■数千円、もしくは小銭を用意しておく
■財布に名前と連絡先を記入しておく
■たまにはおごってもらう


万が一、失くしても支障がない程度のお金を渡しておきましょう。

「お金を持っている」

この事実だけで不安が軽くなり、訴えが減ることがあります。

そして、もしも財布がなくなっても見つかるように名前や連絡先などを記入しておき、ストラップをつけて首からぶら下げてもらうのも良いでしょう。

日頃から信仰している「お守り」などを一緒に入れておいてあげるのもおすすめです。

また、たまにはおごってもらいましょう。

介護者(笑顔)

ありがとう!お母さん!すごく美味しいケーキだったよ


母(ウィンク)

そうかい!良かったよ

このように、少し大げさなくらい喜びを伝えてあげてください。

人は誰でも、自分が役に立つことで喜んでもらえたら嬉しいものです。

そして、誰かに「おごる」という行為は本人のプライドや優越感を刺激し、尊厳を高めることができます。

「お金を持つ」意味を理解して対応を

認知症の介護はまず本人の不安を軽減することが重要です。

ご紹介してきたように、お金はただ単に物を買ったりするだけでなく、

「お金を持つ」=「人としての尊厳」

という人間が生きていく上で非常に重要な役割をもっています。

また、不安や寂しさを買い物などで満たそうとする人は若い人でもたくさんいますよね。

認知症の場合は進行していくほど不安感が大きくなる傾向があるため、「不安を買い物で満たす」という行為がエスカレートするかもしれません。

そのような場合は、本人が一番信頼している親族が貯金通帳などを預かっておきましょう。

ですが、その場合は「お金を預かっている」ことを本人にたびたび伝えて安心させてあげることを忘れないようにしてください。

このように、リスク回避よりも、まず本人の心理状態はどうなっているのか?

「お金を持ちたい」、「買い物がしたい」という本人の気持ちを深く考えてみて、それに適した対応をしてあげるようにしましょう。