(症状15) 言葉の障害(話が理解できない)

アルツハイマー型認知症では、言葉の障害による症状が早い時期にみられることがあります。

物の使い方はわかっているのに名前が出てこなくなり、

「あそこにある、それとって」

このように、指をさしながら、物の名前を言おうとしますが出てきません。

または、

単語の意味がわからない

相手の言っていることが理解できない

言われたことを繰り返して言う

などなど、言葉の障害による症状はさまざまです。

では、このような認知症による言葉の障害にどのような対応をしていけば良いのでしょうか?

意思のつながりの壁になる

「言葉」とは私たちが自分以外の人と意思を交換しあうためになくてはならないものです。

言葉によって自分の気持ちを相手に伝え、そして、わかりあえるからです。

認知症も病気ですから、その病気と付き合っていくには意思の疎通が重要なのに、それが妨げられるのですから、その壁はとても大きいといえるでしょう。

話しかけても、とんちんかんな関係ない返事がかえってきたり・・・

同じことを何度も聞き返されたり・・・

介護人にとってはイライラしてしまうこともありますよね。

しかし、イライラして叱ったりなど逆効果な対応をしてしまう前に、より良いコミュニケーションの方法を考えてみましょう。

どのように話しかければ良いのか?

言葉の障害をもってしまった本人の気持ちになって考えてみましょう。

物の名前が出てこない、単語の意味がわからない、

このような状態になれば、相手が話しかけてきても意味が理解できなくなります。

このようなときは本人の立場になって以下のような対応をしてあげましょう。

■言葉で伝わらない時は動作で伝えてみる

話しかけた時に、理解できてないと感じたら動作をしてみましょう。

たとえば、

「椅子に座ってください」と話しかけても理解できないときは、実際に隣に座って動作を示してあげてください。

■複数ではなく、ひとつのことを話す

話しかける内容はできるだけ理解しやすいようにシンプルにしましょう。

認知症の人は一度に複数のことを話しかけれるのは苦手です。

※一度に複数の事柄を話しかけてしまうと・・

兄(笑顔)

今日はとても良い天気ですから、お茶のあとに散歩に行きましょうか?


父(え)

え?今日、良い天気、、お茶、あと、散歩、、????


※話しかける内容はひとつずつにする

兄(笑顔)

今日は良い天気ですね


父(笑顔)

ああ、良い天気だね


兄(にこ)

お茶が終わったら


父(にこ)

うん


兄(笑顔)

散歩に行きませんか?


父(笑顔)

散歩か!行こう

このように、内容はひとつずつ話しかけてあげるようにすると本人も理解しやすいでしょう。


■簡略化せず具体的に話す

私たちは相手が「察してくれる」のを当たり前だと考えてつい簡略化して話しかけてしまうものです。

※お皿を食器棚にしまってほしいとき抽象的な言い方をすると・・

介護者(え)

そのお皿をしまっておいて


母(普通)

お皿をしまう・・・??

※わかりやすく具体的にする

介護者(笑顔)

そのお皿を食器棚にしまっておいて


母(笑顔)

お皿を・・戸棚にしまう・・はいよ

このように話しかける内容は簡略化せず、具体的にわかりやすくしてあげましょう。


■目を見ながら大きめの声でゆっくり優しく話す

本人の耳が遠い場合は、大きめな声でゆっくりとわかりやすく話しかけましょう。

しかし、大きい声を出そうとするため、ついつい威圧的になりがちです。

そうならないようにできるだけ優しく話しかけることを心がけましょう。

また、できるだけ本人と目線の高さを合わせ、目をきちんと見つめながら話しかけることが大切です。

■スキンシップしながら

スキンシップは心に安心感を与えることができます。

本人が嫌がらない場合は、「肩に手を置く」、「手を握る」などのスキンシップをしならが話しかけてみると良いでしょう。

■話しかけることを示してから

「今から話しかけますよ」

と、まず目線を合わせて態度に示してから話しかけましょう。

後ろからいきなり話しかけるのは本人をとても驚かせるため良くありません。

失行を訂正するときの注意点

葉の障害があらわれるようになると、それをごまかそうとしたり、ウソをついたりすることもあるでしょう。

なぜなら、誰でも、「自分に不利なことは認めたくない」という本能が隠れているからです。

また、ウソをつくだけでなく、「上手く話せない、理解できない」ことでイライラして怒り出すこともあるでしょう。

このようにならないためにも、本人の言い間違えや内容の違う会話などに対して、いちいち訂正せず受け流すことも大切です。

ただ、どうしても間違っていることを訂正しなければならない場面もあるでしょう。

そのような時の会話のコツはまず肯定から入ることです。

※もしも、否定から入ってしまうと、自分のことを拒絶されたと感じてしまい聴く耳をなくすことに・・

兄(困った)

いいえ、ちがいますよ、そうではなくて・・


父(怒る)

むっ


※たとえ間違っていても、まずは肯定して受け入れる

兄(笑顔)

うん、なるほど、そうですね、ですが・・


父(え)

ん?

このように、いったん受け入れることで相手は落ち着き、聴く耳をもってくれます。

会話というのは、このようなちょっとのコツでまったく違う流れを生み出すものです。

「まずは肯定する」

この会話のコツをぜひ取り入れてみてください。

明るい気持ちで対応を

言葉の障害で、自分の言いたいことが相手に伝わらないというのはとてもイライラするものです。

それは介護人も同じことですよね。

ですが、本人も介護人も言葉の壁でイライラしていては良い関係を保つことができません。

まずは、あまり深刻になりすぎないことです。

大変なことにならないことならば、少々の会話の食い違いや、取り繕うためのウソなどは笑顔で受け流してあげましょう。

※たとえ本人がウソをついても・・

介護者(にこ)

今日のウソは30点くらいかな

このように良い意味で前向きに受け流していくことも大切なのです。

また、明るく楽観的に対応してあげると本人も気持ちが軽くなります。

認知症が原因であることを認め、言葉の障害と上手に付き合えるコミュニケーションを築いていってみてください。