認知症とうつ病を見分ける

認知症の過半数を占めるアルツハイマー型はうつ病と同じような症状があらわれます。

そのため、うつ病だと思って病院を受診したものの、じつはアルツハイマー型の認知症だった!という症例がよくあります。

このことで問題なのが、うつ病だと思ってアルツハイマー型の初期を見逃してしまうことです。

認知症の過半数を占めるアルツハイマー型はとにかく早期発見すること。

そのためにもうつ病と見分ける基準をしっかりチェックしておきましょう。

アルツハイマー型とうつ病は親戚関係

アルツハイマー型とうつ病はまったくちがう病気です。

そのことは、脳が萎縮していない若い人にもうつ病が増加していることでわかるでしょう。

しかし、学者のなかには、認知症のアルツハイマー型とうつ病はどちらも、脳内の似たような化学物質の異常によって発症すると主張する人もいます。

つまり、認知症のアルツハイマー型とうつ病は親戚関係の病気であるといえます。

そのことがよく理解できるのがあらわれる症状です。

うつ病の症状】

■食欲がない

■眠れない

■集中力がない

■無気力

■イライラする

■物事を判断できない

■人前に出たくない

■自殺願望がおこる

じつは、このようなうつ病の症状はアルツハイマー型の初期症状とよく似ているのです。

環境の変化で悪化

症状の他に、アルツハイマー型とうつ病は「環境の変化」で悪化するという共通点もあります。

たとえば、

進学や就職による環境の変化についていけず、うつ病が悪化する若い人。

急な引越しをしてアルツハイマーが悪化する高齢者。

年代もちがえば、病名もちがいますが、どちらも環境の変化に弱く悪化しやすい傾向があります。

精神的ショックで悪化

さらにアルツハイマー型とうつ病の似ている点は、精神的ショックがきっかけになることが多いということです。

たとえば、

受験失敗、事業の失敗などで受けた精神的ショック。

長年連れ添ってきた配偶者を失った精神的ショック。

このように認知症のアルツハイマー型とうつ病は、あらわれる症状も似ていれば、きっかけ、悪化する原因も非常によく似ているのです。

アルツハイマーなのか?うつ病なのか?

アルツハイマー型とうつ病は似ているためお互いが連動している場合がよくあります。

しかし、それぞれ治療方法がちがいます。

アルツハイマー型には進行を遅らせる薬で、うつ病には抗うつ薬で治療しなければいけません。

アルツハイマーを発症しているからうつ病の症状も出ているのか?

それとも・・

うつ病だけの症状なのか?

それをしっかりと見分けるためにも以下のチェックリストを使って確認してみましょう。


家族の認知症を疑うチェックリスト
質問答え
曜日や月がわかりますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
前と同じように道がわかりますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
住所・電話番号を覚えていますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
物がいつもしまわれている場所を覚えていますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
電気製品(洗濯機やテレビのリモコンなど)を使いこなすことができますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
自分で状況にあった着衣ができますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
買い物でお金を払うことができますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
身体の具合が悪くなったわけではないのに、行動が不活発になりましたか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
本の内容やテレビの筋がわかりますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
手紙を書いていますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
数日前の会話を自分から思い出しますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
数日前の会話の内容を思い出そうとしても難しいですか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
会話の途中で言いたいことを忘れることがありますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
会話の途中で適切な単語が出てこないことがありますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
よく知っている人の顔がわかりますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
よく知っている人の名前を覚えていますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
その人たちがどこに住んでいるか、仕事などがわかりますか?変わらない
多少悪くなった とても悪くなった
最近のことを忘れっぽくなりましたか?変わらない
多少悪くなった        
とても悪くなった

変わらない・・2点

多少悪くなった・・1点

とても悪くなった・・0点


総合点数が24点以下(認知症の疑いあり)
ただし、このチェックリストの結果だけで認知症の診断はできません。
あくまでも認知症を疑うための目安です。


引用元:認知症介護認知症困難症状別ベストケア50/本間昭&六角僚子著

認知症の疑いがあれば早めに対処を

チェックリストで確認してみて、もしも「認知症の疑いあり)と結果が出たら早めに対処しましょう。

ただ、あくまでも目安ですので焦ってはいけません。

まずはかかりつけの医師か、最寄りの認知症相談窓口に相談しましょう。

アルツハイマー型とうつ病は連動しているものです。

うつ状態になってしまった時の対応も気をつけましょう。

■むやみに励まさない

■適度な運動を一緒にする

■会話を増やす

認知症と同時にうつ病を進行させないためにも周りの家族のケアがとても大切になります。