高齢になると同じ話や愚痴が増える

「しゃべる」ことはとても大切です。

「しゃべる」ことは他人とのコミュニケーションを深め、また日々のストレスを発散できるからです。

とくに認知症の場合、しゃべることで脳に刺激が入り、とても良い効果が期待できます。

しかし、高齢者の話題というのはどうしても昔のことばかり・・。

また、愚痴も多くなるもの。

これでは介護者の方にストレスがたまってしまいますよね。

兄(困った)

また同じ話かぁ・・

では、このような場合、介護者はどのように対応すれば良いのでしょうか?

高齢者は話題の幅が狭くなる

私たちは他人との会話で、主に以下のようなことを話題にしています。

■学生

学校のこと、勉強のこと、好きな異性のこと、テレビ番組や芸能人のこと・・など。

妹(笑顔)

昨日の〇〇ってドラマ見た?


■成人

仕事のこと、家庭のこと、人間関係のこと、テレビ番組や芸能人のこと・・など。

介護者(笑顔)

今日はいつも行くスーパーの特売日なの!

このように日々、自分たちが見たり、聞いたり、行動したりといった経験をもとに話題を選んでますよね。

・・ですが、介護生活に入った高齢者はこれらの経験がグッと減り、話題の材料も少なくなります。

■高齢者

そこで、昔のことばかりを強く思い出すように。

父(笑顔)

子供の頃はいつも川に釣りに行ってたなぁ

さらに認知症になると新しい記憶から薄れていくため、頭の中の引き出しに入っているのは過去のことばかりに。

しかも、話してもすぐに忘れてしまうため、何度も同じ話を繰り返すことになります。

介護者も、それは年のせい、認知症のせいだとわかっていても同じ話を何度もされたらイライラしますよね。

では、このような場合、本人の気持ちを害することなく対応するにはどうすれば良いのでしょうか?

聞き上手になる

一般的に「聞き上手になる」というと「親身になって相手の話をしっかり聞く」というイメージがありますよね。

ですが、それはちょっと違います。

ほんとの聞き上手とは相手ではなく自分の方が主体になって会話をリードすること。

では、高齢者のように何度も同じ話をしてきたり、愚痴を言ってくる場合、どのような聞き上手になれば良いのでしょうか?

■対応例その1(聞き流す)

高齢者が話しかけてくる内容のほとんどは相手に解決法を求めていません。

もちろん、本当に困ったことや悩んでいることがあり、解決法を相談してきたときは親身になって聞く必要があります。

しかし、解決法を求めてない昔話や、愚痴の時は、

本人にとっては、「聞いてもらえるだけで満足」なのです。

ですから、こちら側も毎回、真剣になって聞く必要はありません。

さりげなく上手に聞き流しましょう。


■対応例その2(あいづちを適度に入れる)

聞き流すといっても、あいづちを打たなければ相手も聞いてないことに気づいてしまいます。

ですから、適度にあいづちを打ちましょう。

「うんうん」だけではなく、タイミングよく、「へえ!」、「すごいね!」、など相手が話していて気持ち良くなるあいづちを打ってあげることです。

介護者(え)

そうなの!?

ただし、あまりにもタイミング良く反応していると、話が延々と続いてしまうので、あいづちは少しずつ間隔を長くして減らしていくのがコツです。


■対応例その3(何か別のことをしながら)

相手が話し始めたからといって、毎回毎回、向き合って真剣に聞くことはありません。

本人の話を聞きながらでもできる、何か別のことをしながら聞きましょう。

ですが、テレビを観ながら、掃除機をかけながら・・・など、本人の声がかき消されてしまうものは良くありません。

もしも、テレビを観ながら聞く時は、本人の声が聞き取れるよう音量を少し下げましょう。

このときのコツは、あいづちはもちろんですが、適度に視線を合わせてあげることです。

悪い対応は「無視すること」

いくら、同じ話や愚痴を聞かされてイライラしても無視だけは良くありません。

前述したように、高齢になると話題が狭くなり、昔話ばかりになるのは仕方ないこと。

とくに認知症の場合、前回話したことを覚えていないので、本人はその都度、初めてのように話してきます。

そんな本人の心を察してあげましょう。

■会話を勝手に終わらせない

無視だけでなく、話の途中に黙ってその場を離れたりしては良くありません。

きちんと承諾を得ることが大切です。

兄(笑顔)

すみません!お話の途中ですが、急ぎの用事をしてきます。また後で続きを聞かせてもらえますか?

このように、本人に必ず会話を中断することを伝えましょう。

またこの方法は認知症の場合のみですが、話を終わらせたい時にも使えます。


■「何度も聞いたから!」などと言わない

認知症の場合は、何度話した内容でも初めてのつもりなので、

「もう聞き飽きたよ」

「もういい加減にして」

このように応えるのは良くありません。

それでは本人の心を傷つけてしまい、介護者との関係がギクシャクしてしまいます。

聞き流すことは悪いことではない

相手の話はきちんと聞く」

というのはとても大切なことです。

しかし・・

毎回毎回、「いつもの話」ならば、聞き流すことも大切。

より良い介護とは、「介護される側」と「介護する側」の双方が気分よく過ごせること。

どちらかが一方的に我慢する形は良くありません。

本人は「しゃべりたい気持ち」があり、介護者は「もう聞き飽きたという気持ち」があります。

そんな双方の気分を悪くしないためには、介護者が上手に聞き流してあげることです。

聞き流すことは決して悪いことではありません。

自宅介護はずっと同じ相手と一緒に過ごします。

ですから、穏やかな空間で過ごせるようにしたいものですね。