高齢者の脱水症状は認知症を悪化させる

高齢者の健康管理でもっとも大切なのが水分の補給です。

なぜなら、高齢になるほど細胞内に水分を貯めておくことができなくなり、体内に維持できる水分量がドンドン減っていくからです。

「高齢者は普段から脱水状態になりやすい」ということを忘れてはいけません。

しかも、脱水状態になると、認知症の悪化につながってしまう危険性があるので要注意です。

では、くわしくみていきましょう。

体内水分量は年代、性別で大きく異なる

人間の体は水分が60%占めています。

しかし、それは平均的な数値であり、細かくいえば年代や男女によって異なります。

幼児70%
成人(男性)60%
成人(女性)55%
高齢者50%

このように年をとるごとに体内に維持できる水分量は減っていきます。

しかも、女性は男性と比べて体内水分量は少なめです。

ですから、表では高齢者は50%ですが、女性の場合はさらに低いでしょう。

では、なぜ高齢になると体内水分量がこんなに減ってしまうのでしょうか?

水分を維持しにくい

高齢になると誰もが落ちてくる体の部位があります。

それは、筋肉量です。

じつは筋肉は水分を維持しておく大切な貯蔵庫でもあるのです。

しかし、高齢になると筋肉量がどうしても減ってしまうため、「体内に水分を保管しておく場所がなくなってしまう」というわけですね。

男女で体内水分量に差があるのも筋肉量が大きく関係しています。

なぜなら女性はどうしても男性よりも筋肉がないため体内水分量が少なめに。

もちそん、それは若い時でも同じであり、女性は男性よりも脂肪は多くありますが、じつは脂肪は筋肉のように水分を貯めておくことができません。

ですから、適度な運動をして筋肉をつけておくことは、とくに女性にとっては大切なことなのです。

「もう年だから」とあきらめることはありません。

高齢になっても散歩などの運動を続けることで維持・強化していくことは十分、可能です。

水分を放出しやすい

高齢者の身体は筋肉量の減少で水分を維持しにくいだけではありません。

せっかく摂取した水分も放出しやすいという特徴があります。

◆腎臓の機能低下

高齢者の身体は外見だけでなく内臓も老化していきます。

身体はつねに老廃物を排出していますが、高齢になると腎臓の機能が衰えてしまい、若いときのようにキビキビと働いてくれません。

しかし、老廃物の量は変わりませんから、それらを体外に排出しようと多くの尿量が必要となります。

その結果、多くの水分が体内から奪われてしまうことに。

このように、「高齢」という理由だけで若い時よりも常に水分量が足りていない状態になることを「生理的脱水状態」といいます。


◆薬の副作用による利尿作用

ただでさえ脱水しやすい身体に加え、高齢者には他のことも大きく影響してきます。

そのひとつが、薬の服用です。

高齢者の人がよく服用している薬に高血圧を下げる降圧剤がありますね。

降圧剤とは、高血圧の原因である血管内の浸透圧を下げるために水分量を減らす利尿作用をもっています。

しかし、高齢になると代謝機能が衰えているため、若い時よりも薬の影響を受けやすくなっています。

そのため、降圧剤を服用することで血圧は下がっても利尿作用により身体が脱水状態に。

これではせっかくの薬も意味がありません。

水分補給を見逃しやすい

若い頃は体内の水分量が減れば、「喉が渇いた!水分を補給しろ!」と脳から命令がやってきますよね。

しかし、高齢になると、脳からやってくる水分補給命令が鈍ってしまい、喉の渇きを感じません。

ただでさえ、体内に水分を維持しにくく、放出しやすいのに、補給をしないとなれば簡単に脱水状態になってしまいます。

血行不良が認知症を悪化させる

体内が脱水状態になると、血液が濃くなってしまいます。

濃くなってしまった血液はスムーズに体内を巡ることができなくなり、血行不良に。

そして、脳にも十分な血液が届きません。

このことが認知症の悪化の大きな原因になってしまうのです。

ですから、高齢者の認知症の場合はとくに水分補給が重要だということになります。

毎日、意識して水分補給を!

体内の水分量が減ってくると、頭がボーとしたり、せん妄症状がでることがあります。

(参考記事)


しかし、認知症を抱えている場合、自分の不調をまわりにうまく伝えることができません。

そのため、家族やまわりがつねに注意して見守り、管理してあげることが必要です。

定期的に水分補給をしているか?をチェックし、もしも自力で補給できない場合は飲ませてあげなければいけません。

【対応例】
■定期的に水分を補給するように促す
■冬場で汗をかかない時期でも水分補給をしてもらう
■自力で飲めない場合は周りがきちんと管理してあげる

このように、毎日、意識して水分補給をするようにしましょう。

水のひと工夫を!

高齢になると嚥下機能(飲み込む力)がどうしても衰えてきます。

そのため、食事をするとき、若い頃のように簡単に喉を通っていきません。

それは固形物だけでなく、じつは水も同じです。

とくに冷たい水は刺激があり、喉を通りにくくしてしまいます。

本人に気持ちよく水を飲んでもらうために、

■少しだけトロミをつける

■ぬるめの白湯にする

このように、本人の立場になり、たとえ水いっぱいでも、できるだけ飲みやすいようにひと工夫してあげてください。

認知症を悪化させないために!

介護を受けている高齢者の方の中で、「水分を多く摂るとトイレに行きたくなるから」

という理由で水分を控えめにしている人がいます。

また、介護する側でも、「水分を多く摂らせるとトイレ介助や、おしめの交換が大変だから」

という理由で水分を少ししか与えてない人がいます。

しかし、それは絶対にいけません。

せっかく認知症の薬を飲んでいても、脱水状態になっていては意味がありません。

ご紹介したように、高齢者は脱水状態になりやすく、認知症の悪化につながります。

ですから、その場だけの「ラクに思える対応」ではいけません。

なぜなら、それは本人だけでなく、介護する側や周りの人にとっても、未来に大きな影響をおよぼすことになるからです。

そうならないためにも、

■高齢者の身体は脱水状態になりやすい

■認知症の場合は不調を訴えにくい

■脱水状態は認知症を悪化させる危険性がある

このことを介護をする周りがしっかりと認識し、本人がすすんで水分を摂りやすくなる環境にしてあげてください。

脱水状態にならないよう、十分な水分補給ができるよう見守り、管理してあげるようにしましょう。