(症状2) 徘徊

「徘徊」とは歩き回ることをいいます。

しかし、徘徊を、その言葉のまま、ただ歩き回っている行動と捉えてしまってはいけません。

なぜなら、徘徊をひとくくりにしてしまうと、本人に合わせたベストな対応ができなくなるからです。

では、くわしくみていきましょう。

目的があるから歩き回る

徘徊という症状は周りの者にとっては理解することがなかなか難しいですよね。

それは客観的に眺めていると、どうしても意味のある行動に見えないからでしょう。

■ぬいぐるみを抱っこして歩き回る人

■ゴミを広いながら歩く人

■うつむいたまま黙々と歩き続ける人

これらの状態は確かに本人以外には何のためにそうしているのか理解に苦しみます。

そのため、認知症の人が意味もなく歩き回っていると、すぐに「徘徊している」と決め付けていないでしょうか?

しかし、どんなに意味もなく歩き回っているようにみえても、本人にはきちんとした目的があるのです。

徘徊と決めつけない

認知症の人が歩き回っているだけで、すぐに徘徊と決め付けるのはよくありません。

なぜなら、以下のような流れになりかねないからです。

1.認知症の人が歩き回っている

2.徘徊している

3.何とかしなければならない

■結果■

・薬で動けなくする

・部屋にカギをかけて閉じ込める

・縛り付ける


このように最初から「徘徊」と決め付けてしまうと、そこで「なぜ?」という原因を考えてあげる気持ちがストップします。

すると、ただ単に徘徊を止めるだけの対応になり、本人の人権を無視した行動に出てしまいがちになります。

目的を探してみる

歩き回る目的があるといっても、周りの人間がその目的を探すのは確かに難しいことでしょう。

しかし、本人のことをよく知っている家族ならば、元気だったころの習慣、性格などから推測することで目的を探すことは不可能ではありません。

どうか、徘徊だと決め付けないで、ぜひその努力をしてみてあげてください。


たとえ、わからなくても、、、

介護者(にこ)

私たちにはわからないけど、お母さんにとっては何か大切な意味のあることなんだろうね


このような温かい気持ちで見守ってあげることが大切です。

引っ越しした時におこりやすい

認知症の介護にあたって、子供と同居することになり、新しい土地に引っ越すことはよくあることです。

しかし、認知症を発症してからの引越しには注意しなければいけません。

たとえば、私たちも見知らぬ土地に行くと、どこに向かったら良いのかわからずウロウロしてしまいますよね?

それでも、私たちは「新しい土地に引っ越してきた」という記憶があるのであせることはありません。

しかし、認知症を患っている人にとってはちがいます。

引っ越してきたこと自体をスッポリと忘れてしまうため、その不安は計り知れません。

父(困った)

ここはいったいどこだ?家に帰りたい・・家はどっちだ?


このように自分の家に何とか帰ろうと必死になって当然です。

想像してみてください・・

私たちも、もし、同じように、いきなり知らない場所にひとりでポツンといたとしたら。

何が何でも自分の記憶にある家に戻ろうとしますよね。

住み慣れた土地でもおこる

引越しをしていなくても、徘徊は住み慣れているはずの土地でもおこります。

認知症が進行していくと、新しい記憶からなくしていき、じょじょに過去をさかのぼっていきます。

そのため、結婚する前、就職する前、もしくは子供のころにまで記憶がさかのぼることも。

そうなると、本人にとっては何年も住み慣れた土地でさえ、見知らぬ場所になってしまうことがあるのです。

また時間感覚も薄らいでしまっているため長時間歩いているという感覚がもてません。

そのため、途方もなく延々と歩き回ることも。

デパート、駅などでも・・

また、デパートや駅なども徘徊がおこりやすい場所です。

介護者(笑顔)

お母さん!ちょっとトイレにいってくるから5分ほど待っててね


母(笑顔)

はいはい、わかったよ~いっといで~


・・数分後、約束した記憶がスッポリ抜け落ちる

母(困った)

あら!ここはどこかしら?


このように「まっててね」と言われたこと自体を忘れてしまうことがあります。

そのため、徘徊することになるのですが、それにはきちんとこのような理由があるということを理解してあげてください。

増加している徘徊の事故

徘徊の症状がひどくなると、行方不明の捜索を警察に依頼する事態になります。

ここ近年で、捜索される行方不明者は増加しており、中には最悪なケースにいたる場合もあります。

家族にとって大切な妻や夫、そして両親を守るにはどう対応していけば良いのでしょうか?

見守りを強化する

徘徊とはいっても本人にとっては必ず目的があります。

その目的を尊重してあげるためにも、本人が出かけようとしたら一緒についていくなど、できるだけひとりにしないようにしましょう。

とはいっても、四六時中、見張っているわけにもいきませんよね。

GPS機能のスマホなども有効ですが、できれば、外出する前に気がつきたいものです。

そこで、便利なのが離床センサーマットや、玄関センサーです。

またセキュリティシステム会社ではお年寄りや子供専用の屋外見守り探知機などでサポートしてくれます。

これらの機器を上手に使って見守りを強化してあげてください。

メモをポケットに入れておく

もしもの時に備えて、連絡先を書いたメモを持参しておくようにします。

名前○○○○
住所東京都○○区○○町○○ー○
連絡先○○○ー○○ー○○○○

本人には迷子になった時、このメモを誰かに見せるようにしっかりと伝えておきましょう。

もちろん、迷子になったと判断できる能力があることが前提ですが、メモがどのように役に立つかわかりません。

これらのメモを何枚も用意して、本人の持ち物はもちろん、着ていきそうな上着などにも入れておきましょう。

また名前や住所、連絡先を書いた札を服の目立たない所に縫い付けておくのも有効的です。

近所の人に協力してもらう

家族が認知症だということを近所に伝えることをためらう人もいますが、徘徊の症状があらわれ出したならば、そうも言っておれません。

認知症の介護は家族だけで見守っていくには無理があります。

そこで、勇気をもって近所の力も借りましょう。

よく通る道沿いにあるお店、喫茶店などに本人の症状と外見の特徴、そして見かけたときには連絡してほしい旨を伝えておきます。

本人の人権を尊重して見守る

徘徊は認知症の周辺症状の中でも介護する家族をもっとも困らせるものです。

そのため、家族は疲労が重なり、出かけられないようにとカギをかけて閉じ込めたり、動けなくしたり、薬に頼ったりしてしまうことも。

夜間などは仕方がない場合もありますが、昼間なら本人に付き添って一緒に散歩するなど、できるだけ優しく見守るようにしたいものです。

今では警察や各市町村もお年寄りの徘徊対策として、さまざまなシステムを導入しています。

万が一、行方不明になってしまった場合は、それらのシステムによっていち早く捜索してくれます。

このように現在は地域あげて認知症の対応策が大きくとられるようになってきました。

それら外部の支援を素直に借りることが認知症介護のカギです。

もしも万が一、行方不明になった時はためらわずすぐに連絡しましょう。