(症状10) せん妄

せん妄(せんもう)とは病気の名前ではありません。

せん妄とは基本的に脳の機能異常によって起こる意識障害のことです。

高齢者に限らず、若い人や中高年でも起こることがあり、認知症ではありません。

ですが、高齢者は他の年齢層に比べて、格段にせん妄になりやすい上に、認知症の夜間せん妄にもよく似ています。

せん妄は治療によって回復しますが早期発見が大切であり、治療が遅れてしまえば慢性化してしまうことも。

そうならないためにも、

■せん妄とは何か?

■認知症と何がちがうのか?

このことをしっかりと頭に入れておきましょう。

意識障害がおこる

「ここはどこ?」

「今はいつ?」

このような見当識障害があらわれると、つい認知症だと思ってしまいますよね。

しかし、じつは・・

高齢者に多く現れる「せん妄」かもしれません。

せん妄は、何らかの原因で脳の意識を保つ部分に異常が起こることで発症するといわれています。

症状は、

■イライラして興奮する

■半分ずっと寝ているような状態が続く

■実際にはないものが見える

■手のふるえ

このように、認知症にとてもよく似ている症状が現れます。

そのため、見逃しやすいのですが、認知症と大きく違う点があるので、それを知っておけば早めの治療が可能です。

では、さらに「せん妄」について詳しくみていきましょう。

せん妄が高齢者に多い理由

せん妄は、あることがきっかけとして起こる場合が多くあります。

■入院

■手術のあと

■アルコール依存症の人が摂取をやめたとき

■薬の服用、もしくは中断したとき

この他にも、引越しなど環境の変化や、親しい人を失ったなどの精神的ショックなどでも起こることがあります。

このように、これらのことがきっかけになれば、どの年齢層で起こっても不思議ではありません。

ですが、以下のように「とくに高齢者に多い理由」があるのです。

【高齢者がせん妄になりやすい理由】

■身体が脱水状態になりやすい

■排尿困難で尿がたまりやすい

■便秘しやすい

■視力低下

■難聴

■妻(夫)との死別によるショック


これらのことが重なりやすい高齢者はせん妄になるリスクがどうしても高めになってしまうのです。

とくに入院時には70才以上の高齢者15%~50%がせん妄を発症するといわれています。

たとえ、手術の後でなくとも、勝手に酸素マスクをとったり、点滴を抜いたり、夜に大声を出すなどの症状があらわれることも。

現在でも、このようなせん妄がなぜ起こるのか?その原因がハッキリしていないものの、

脳の神経物質を伝達する役目であるアセチルコリンの減少が関わっているのではないか?

といわれています。

アセチルコリンは年をとることでも減少していきますが、精神的ショックや、薬の服用でも減少します。

このように、高齢者は老化するうえに、さまざまなことが要因となり、アセチルコリンが減少しやすい状態だといえるでしょう。

認知症とのちがい

では、せん妄と認知症の違う点は何でしょうか?

まず、大きな違いが発症の仕方です。

■せん妄は、何かをきっかけとして突然発症し、数日続いたのち1週間ほどで症状が消えていきます。

対して、

■認知症は、いつ発症したのかハッキリせず、症状はずっと続いていきます。

では、このことも含めて、せん妄と認知症の違いをまとめて確認しましょう。

◆せん妄と認知症のちがい

せん妄認知症
意識障害されているほぼ正常
発症時ハッキリしているいつからかハッキリしない
経過の仕方数時間から数日ずっと続く
症状の変動ありなし
精神症状幻視、興奮記憶障害、見当識障害、幻視

こららの、せん妄と認知症の違いを知っておきましょう。

そうすれば早めに気づいて対処することができます。

治療方法

せん妄の治療方法はそれぞれの原因によって異なります。

脱水ならば、点滴など。

ですが、共通する治療方法は、

本人が落ち着ける環境にしてあげて精神の安定を取り戻せるようにすることです。

具体的は対応として・・

【対応例】
■部屋を明るくして何がどこにあるかわかりやすくする
■カレンダーや時計など目立つ所において、いつでも日時がわかるようにする
■家族が側にいて頻繁に話しかけるようにする
■メガネや補聴器はすぐに使えるように側においておく

このように少しでも安心感がもてる環境や周りの対応を見直してみましょう。

早期発見が大切

せん妄は原因がハッキリしている場合が多く、治療によって回復することが可能です。

しかし、若い人ならば、せん妄の症状が出ればすぐに異変に気づきやすいのですが、高齢者の場合はそうもいきません。

このように認知症と症状が似ているため、原因に気づかないことがあるからです。

もしも治療が遅れてしまうと慢性化することがあり、回復するのに時間がかかることも。

そのようにならないためにも、

繰り返しになりますが、以下のせん妄の特徴をしっかり覚えておきましょう。

■突然、発症する。

■発症のきっかけがある。

■数時間、数日で進行する。

■症状は強くなったり、弱くなったりと変動する。

これら、せん妄の特徴を見極めて早期発見につなげてください。