(症状20) 万引き

認知症の周辺症状でもっとも困るのが、家族以外の他人に迷惑をかけてしまう行動です。

万引きもそのひとつ。

(参考記事)


万引きについては、原因と対応法をしっかりと考える必要があります。

なぜならば、本人にその気がなくても、万引きは立派な軽犯罪になってしまうからです。

そのため、何としても、未然に防ぐ対策をしなければいけません。

ところで、なぜ認知症の人は万引きをしてしまうのでしょうか?

このことを本人の立場になったつもりで考えてみましょう。

本人に罪の意識は全くない

認知症は感情の抑制が難しくなるため、「これが欲しい!」と思ってしまうと我慢できません。

それがたとえお店の品物であっても、欲しいという欲求をおさえることが難しくなります。

通常ならば、品物はお金を支払えば自分の物になると認識できますが、認知症の場合・・

品物を手に入れたい

お金を払う必要がある

この図式が成り立ちません。

しかし、自分が欲求する物を手に入れたいという気持ちはしっかりあるので行動に移してしまいます。

たとえるならば・・

子供がお母さんと買い物に一緒にいき、カゴの中に欲しいものをポイポイ入れる感覚と同じです。

カゴに品物を入れる時、子供は支払いのことなんて頭にありませんよね。

ただ「欲しいものを手に入れたい!」という気持ちだけです。

認知症で万引きをしてしまう高齢者も、このときの子供と同じだと思ってよいでしょう。

ですから、本人にとっては盗むつもりは全くなく、「ただ欲しい物を手にいれたいだけ」ということになるのです。

しかし、世間から見ればお金を支払わずにお店を出てしまえば、その時点で万引きになってしまいます。

では、このような非常に困った症状に対してどのようにすれば良いのでしょうか?

事前に対策をしておく

認知症による万引きを防ぐためには、事が起こる前に対処しておくことが有効です。

■あらかじめお店の人にお金を渡しておく

どのお店で万引きするのかを把握し、事前にお店の人に話しておきます。

そしてあらかじめお金を渡しておくか、連絡をしてもらって後払いにしてもらいましょう。

■診断書を作成しておく

場合によってはお店の人に納得してもらうために、認知症だと説明する必要があるでしょう。

その時は、病院で医師に事情を説明し、認知症であるという診断書を発行してもらってお店の人に見せます。

問題点

事前に対策をしておくのはとても有効的な方法ですが、問題がおこることもあります。

それは、顔見知りなど、昔からよく知っているお店での万引き。

「顔見知り」と「親しい」はちがいます。

親しくしているお店ならば、事情を説明しにきた家族の心情を深く察してくれるので心配ありません。

しかし、顔見知りの場合、同じ地域に暮らしている以上、家族にとってはどうしても世間体が気になります。

もしも、話した内容が一人歩きしてしまい、広がってしまえば、本人だけでなく家族にとっても非常に不名誉なことになってしまいます。

それは何としても避けたいですよね。

できるだけ一緒に買い物に行く

本人と家族の名誉を保つためにも、普段からできるだけ一緒に買い物に行くようにします。

そのとき、いくつかのコツがあります。

■家族が棚から品物をとる

本人にカートを押してもらい、欲しい物を聞ききます。

そして家族が棚から品物をとるようにしましょう。

介護者(笑顔)

欲しい物はなに?

母(笑顔)

いつものノド飴が欲しいわ

介護者(にこ)

これだね!はい!カゴに入れるね

このようにすることで、

「品物はまずカゴに入れる」

ということを目で見て知ってもらいます。

■支払いは本人にしてもらう

支払いは家族ではなく、必ず本人にしてもらいましょう。

お金の選び方や、計算ができなくてもかまいません。

家族が隣で補佐してあげながら、本人の手でお金をレジの人に渡してもらいます。

このようにすることで、

「品物を持ってお店から出るには、レジを通らなければならない」

ということを知ってもらいます。

万引きという結果を防ぐために

お店の人に、本人が認知症であるということを打ち明けるのは家族にとって非常に辛いことです。

ですが、忙しくて一緒に買い物に行けない日もあるでしょう。

そのようなときは仕方ありません。

必ず、お店側に事情を説明し、お金を支払っておくか、後払いにしてもらいましょう。

どんなに本人に認識がなくても、万引きは犯罪です。

それを未然に防ぐことをまず第一に考えなければいけません。